世界最高峰の音楽コンクールの一つであるショパン国際ピアノコンクールで、日本のピアニスト桑原志織さんが素晴らしい演奏を披露し、大きな注目を集めています。2025年10月13日、彼女は見事に二次予選 突破を果たし、三次予選への進出を決めました。
この快挙は、彼女のこれまでの輝かしいコンクール歴に新たな1ページを刻むものです。2025年5月のエリザベートからの挑戦を経て、ついに小学生の頃の卒業文集の夢であった舞台で、その才能を遺憾なく発揮しています。
この記事では、彼女の予備予選免除の背景や、聴衆を惹きつける演奏スタイルと魅力を徹底解説します。また、二次予選での演奏曲目と評価、会場を熱狂させた世界の反応、そして気になる使用ピアノの選択や、これから挑む三次予選の課題まで、桑原志織さんのショパンコンクールにおける挑戦の全てを網羅的にお届けします。
この記事でわかること
- 桑原志織さんのショパンコンクール二次予選での演奏内容と結果
- 彼女のこれまでの圧倒的なコンクール実績と経歴
- 多くの聴衆を魅了する演奏スタイルや使用楽器に関する詳細
- 三次予選の展望と今後のコンクールのスケジュール
桑原志織 ショパンコンクールでの快進撃を速報
- 祝!二次予選 突破で三次予選へ
- 二次予選での演奏曲目と評価
- 会場を沸かせた世界の反応
- 彼女が選んだ使用ピアノはスタインウェイ
- 次のステージ、三次予選の課題
祝!二次予選 突破で三次予選へ
2025年10月12日深夜(日本時間13日早朝)、ポーランドのワルシャワ・フィルハーモニーから吉報が届きました。開催中の第19回ショパン国際ピアノコンクールにおいて、ピアニストの桑原志織さんが見事に二次予選を通過し、三次予選(セミファイナル)への進出を決めたのです。
一次予選を通過した40名の精鋭たちが競い合った二次予選は、極めてレベルの高い演奏が続きました。その中で、桑原さんは持ち前の実力を存分に発揮し、審査員と聴衆に強い印象を残した結果、20名の通過者の一人としてその名を連ねました。
今回のコンクールでは、日本から桑原さんの他に、牛田智大さん、進藤実優さんも三次予選に進出しており、日本勢の活躍が際立っています。前回2021年のコンクールでは、反田恭平さんが2位、小林愛実さんが4位に入賞し日本中を熱狂させましたが、今回もその再現、あるいはそれ以上への期待が高まります。
三次予選は、ファイナル進出をかけた最後の関門です。桑原さんがこの難関を突破し、ファイナルの舞台で協奏曲を演奏する姿を見られるか、日本中の音楽ファンが固唾をのんで見守っています。
二次予選での演奏曲目と評価
桑原志織さんが二次予選で披露したプログラムは、彼女の音楽性の幅広さと深い洞察力を示す、非常に考え抜かれた構成でした。演奏時間は約45分。ショパンの多様な魅力を引き出す選曲で、満員の聴衆を圧倒しました。
▼桑原志織さん 二次予選 演奏プログラム
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
- 24の前奏曲 Op.28より 第13番~第18番
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
- ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53 「英雄」
冒頭の「舟歌」では、ヴェネツィアのゴンドラを思わせる優雅な揺らぎを、驚くほど繊細なタッチで表現しました。pp(ピアニッシモ)の弱音が溶けるように温かく、会場全体が彼女の作り出す音の世界に引き込まれていくのが分かりました。
続く「24の前奏曲」からの6曲では、各曲のキャラクターを見事に描き分けます。安らぎと悲哀が交差する第13番から、劇的な感情がほとばしる第18番まで、曲ごとに全く異なる表情を見せ、聴き手を飽きさせませんでした。特に有名な第15番「雨だれ」では、中間部の重厚な響きが際立っており、彼女の表現の深さを改めて感じさせます。
後半の「幻想曲」と「英雄ポロネーズ」は、まさに圧巻の一言でした。「幻想曲」では、物語を語るような構成力と色彩豊かな音色で、約13分の大曲を一つの壮大なドラマとして描ききりました。そして最後の「英雄ポロネーズ」。気高さと力強さを兼ね備えた演奏は、聴衆の心を鷲掴みにします。超絶技巧が求められる中間部の左手オクターブも完璧にこなし、輝かしいフィナーレで演奏を締めくくりました。
全体を通して、いくつかの小さなミスタッチはあったものの、それを全く感じさせないほどの音楽的な説得力と推進力があり、彼女の演奏家としての器の大きさを証明するステージとなりました。
Chopin Institute
会場を沸かせた世界の反応
桑原志織さんの二次予選での演奏が終わると、ワルシャワ・フィルハーモニーのホールは割れんばかりの拍手と「ブラボー」の歓声に包まれました。彼女が舞台袖に下がった後も拍手は鳴りやまず、その熱狂ぶりはインターネットのライブ配信を通じて世界中の視聴者にも伝わってきました。
SNS上でも、彼女の演奏に対する称賛の声が溢れています。 「桑原さんの英雄ポロネーズは気品とパワーが両立していて最高だった」 「舟歌の美しさに涙が出た。間違いなくファイナリスト候補だ」 「技術もさることながら、音楽のスケールが他のコンテスタントとは一線を画す」 といった、国内外のクラシックファンからのコメントが数多く投稿されました。
特に、音楽評論家やコンクールウォッcherからも高い評価を得ています。一次予選の段階から海外メディアでは「極上のパフォーマンス」と絶賛されていましたが、二次予選でのダイナミックかつ説得力のある演奏は、彼女が優勝候補の一人であることを改めて世界に印象付けたと言えるでしょう。この聴衆を惹きつける力こそが、彼女の大きな武器の一つです。
彼女が選んだ使用ピアノはスタインウェイ
ショパンコンクールは、コンテスタントが演奏するピアノを複数のメーカーから選択できる数少ないコンクールの一つとして知られています。第19回大会では、スタインウェイ・アンド・サンズ、ヤマハ、カワイ(シゲル・カワイ)、ファツィオリに加え、半世紀ぶりにベヒシュタインが公式ピアノとして復活しました。
この5つの選択肢の中から、桑原志織さんはスタインウェイを選択して二次予選に臨みました。スタインウェイは、その輝かしく豊かな響きと、幅広いダイナミクス表現が可能なことから、多くのピアニストに選ばれる世界標準のピアノです。
彼女のパワフルでありながらも繊細なタッチ、そして色彩感豊かな音楽表現は、スタインウェイの持つポテンシャルを最大限に引き出していました。「英雄ポロネーズ」で見せた骨太で重厚なサウンドから、「舟歌」での透明感あふれる弱音まで、彼女の意図する音楽を見事に具現化していたと考えられます。
ちなみに、今回のコンクールではピアノセレクションのルールにいくつかの変更点がありました。従来はラウンドごとに楽器の変更が可能でしたが、今回は原則として一度選んだピアノを変更することはできません。オーケストラと共演する本選を見据え、ソロの段階から楽器を選ぶ必要があるため、ピアニストたちはより慎重な選択を迫られました。桑原さんのスタインウェイという選択は、彼女の音楽性と最終的なゴールを見据えた戦略的な判断だったのかもしれません。
次のステージ、三次予選の課題
二次予選を突破した桑原志織さんが次に挑むのは、**三次予選(セミファイナル)**です。このステージは、ファイナリスト10名(予定)を選出するための最後のソロ演奏の関門であり、コンテスタントの総合的な実力が問われます。
三次予選の概要と日程
三次予選は、休養日を1日挟んだ10月14日(火)から16日(木)までの3日間にわたって行われます。演奏時間は一人あたり約45分から55分。二次予選よりもさらに長いプログラムで、ピアニストとしての持久力や構成力も試されることになります。
課題曲のポイント
三次予選の課題曲は、主に以下の2つの要素で構成されています。
- ピアノ・ソナタ: 第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」 または 第3番 ロ短調 Op.58 のいずれかを選択。ショパンのピアノ・ソナタの中でも最高傑作とされる大曲であり、深い楽曲理解と構築力が求められます。
- マズルカ: 指定された作品番号(Op.30, 33, 41, 50, 56, 59)の中から任意の曲集(セット)を選択。ポーランドの民族舞踊であるマズルカのリズムやニュアンスをいかに表現できるかが評価の鍵となります。「ショパンの心臓」とも言われるマズルカは、このコンクールで最も重要視されるジャンルの一つです。
この他に、任意の自由曲を加えてプログラムを完成させます。どのソナタとどのマズルカを選び、どのようにプログラム全体を構成するのか、各コンテスタントの個性と戦略が色濃く反映されるステージです。桑原さんがどのような選曲でこの難関に挑むのか、大いに注目が集まります。
桑原志織 ショパンコンクールまでの軌跡と強さの秘密
- 異例の予備予選免除の背景とは
- エリザベートからの挑戦と進化
- これまでの輝かしいコンクール歴
- 人々を魅了する演奏スタイルと魅力
- 小学生の頃からの卒業文集の夢
異例の予備予選免除の背景とは
桑原志織さんは、今回、数百人が参加する映像審査とワルシャワでの予備予選を経ることなく、本大会に直接出場する権利を得ました。これは「予備予選免除」という特別な資格によるものです。
この背景には、ショパン研究所(NIFC)によるルールの変更がありました。従来、予備予選が免除されるのは、ごく一部の主要国際コンクールの直近回における上位2名の入賞者に限られていました。しかし、第19回大会に向けてこのルールが改定され、年齢制限内であれば過去の指定コンクールでの実績も認められるようになったのです。
桑原さんは、2021年に開催された「アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノマスターコンクール」で第2位という歴史的快挙を成し遂げています。この輝かしい実績が評価され、彼女は予備予選免除の資格を獲得しました。
このルール変更は、既に国際舞台で高い評価を得ている実力者が、予備予選の負担なく本大会に集中できるというメリットがあります。一方で、免除者が増えたことにより、予備予選を突破できる枠が狭まるという側面も持ち合わせています。桑原さん自身もインタビューで、自分が免除枠で出場することで予備予選通過者が一人減ってしまうことに悩み、すぐには出場を決められなかったと語っています。
このような葛藤を経ての出場だからこそ、彼女のこのコンクールにかける想いは人一倍強いものがあると考えられます。
エリザベートからの挑戦と進化
ショパンコンクールに臨む直前の2025年5月、桑原志織さんはベルギーで開催された「エリザベート王妃国際音楽コンクール」に出場し、見事ファイナリストに選ばれました。このコンクールは、ショパン、チャイコフスキーと並び「世界三大コンクール」と称される最高峰の舞台の一つです。
エリザベートコンクールは、特にその過酷さで知られています。ファイナリストは、外部との接触を一切断たれた環境で1週間を過ごし、その間に与えられた新曲の協奏曲を仕上げなければなりません。このような極限の状況下で、彼女はブラームスのピアノ協奏曲第2番という大曲を堂々と演奏しきりました。
この経験は、彼女をピアニストとして、そして一人の人間として大きく成長させたに違いありません。精神的、肉体的なタフさが要求される国際コンクールを勝ち抜くための術を、身をもって学んだはずです。エリザベートコンクールという大きな挑戦を乗り越えた自信と経験が、現在のショパンコンクールでの落ち着きと、音楽のスケールの大きさにつながっていることは間違いないでしょう。
実は、2021年のルービンシュタインコンクールとエリザベートコンクールの日程が重なった際、彼女は後者を断念した経緯があります。その心残りを晴らすかのような今回の挑戦とファイナル進出は、彼女のキャリアにおいて重要な一歩となり、ショパンコンクールでの快進撃の大きな布石となっています。
これまでの輝かしいコンクール歴
桑原志織さんの実力は、今回のショパンコンクールやエリザベートコンクールで突如開花したわけではありません。彼女は10代の頃から国内外の数々のコンクールで圧倒的な成績を収め続けてきました。その安定した実力から、一部では「シルバーコレクター」と呼ばれるほど、常に上位に名を連ねてきました。
以下に、彼女の主要な国際コンクールでの受賞歴をまとめます。
▼桑原志織さん 主要国際コンクール受賞歴
受賞年 | コンクール名 | 順位・賞 |
2025年 | エリザベート王妃国際音楽コンクール | ファイナリスト入賞 |
2021年 | アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノマスターコンクール | 第2位(日本人史上最高位) |
2019年 | ブゾーニ国際ピアノコンクール | 第2位(日本人史上最高位)、ブゾーニ作品最優秀演奏賞 |
2017年 | ヴィオッティ国際音楽コンクール | 第2位 |
2016年 | マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽コンクール | 第2位、最年少ファイナリスト賞 |
これらのコンクールは、いずれも世界のトップを目指す若手ピアニストが目標とする権威ある舞台です。そこで立て続けに準優勝という結果を残している事実は、彼女の才能と実力が本物であることを雄弁に物語っています。
国内でも、東京藝術大学在学中の2014年に第83回日本音楽コンクールで第2位と聴衆賞を受賞するなど、早くからその才能は注目されていました。これら数々の輝かしいコンクール歴が、現在の彼女の音楽の礎となっているのです。
人々を魅了する演奏スタイルと魅力
桑原志織さんの演奏は、一言で表すと「卓越した技術と深い音楽性の融合」と言えます。彼女のピアノからは、力強い打鍵から生まれる重厚な響きと、羽のように軽やかで透明感のある弱音という、両極端な音色が見事に引き出されます。
彼女の演奏スタイルには、いくつかの特徴が挙げられます。
健康的で美しい音色
彼女の音には、無理な力みがなく、どこか「健康的な美しさ」が感じられます。強い腕の使い方と柔らかい指先のタッチの絶妙なバランスが生み出す音色は、フォルテではしなやかで雄大に、ピアニッシモでは温かく豊かに響きます。この自然体の音色が、聴衆に心地よさと感動を与えます。
深い共感力と物語性
特に彼女が得意とするのは、シューベルト、ブラームス、リストといったドイツ・ロマン派の作品です。楽曲に込められた物語や作曲家の想いを深く読み解き、聴き手に伝える表現力は特筆すべきものがあります。難解な大曲であっても、技術を誇示するのではなく、音楽そのものの魅力を伝えることに主眼が置かれているため、聴き手は自然と音楽の世界に没入できます。
繊細なルバートと構築力
ショパン作品の演奏に不可欠な「ルバート(テンポの揺らし)」のセンスも抜群です。それでいて、音楽全体の構築感が失われることはありません。情熱的なエネルギーと、建築物のような精緻さを両立させる知的なアプローチが、彼女の演奏に説得力をもたらしています。
これらの魅力が一体となり、桑原志織さんならではのスケールの大きな音楽が生まれるのです。
小学生の頃からの卒業文集の夢
桑原志織さんにとって、ショパンコンクールは単なるキャリアのための一つのコンクールではありません。それは、彼女が幼い頃から抱き続けてきた、特別な夢の舞台なのです。
彼女はインタビューで、小学校の卒業文集に、将来の夢として「ショパンコンクールに出ること」と書いたというエピソードを明かしています。当時はピアノのコンクールといえばショパンコンクールしか知らなかった、という可愛らしい理由だったようですが、その夢が数十年の時を経て、不思議な縁で現実のものとなりました。
学習院初等科から音楽の道へ進み、東京藝術大学を首席で卒業。その後ドイツへ留学し、数々の国際コンクールで実績を積み上げてきました。その長い道のりは、決して平坦なものではなかったはずです。しかし、彼女の心のどこかには、常にこのワルシャワの舞台があったのかもしれません。
予備予選免除の知らせが届くまで、ショパンコンクールへの出場は選択肢になかったと語る彼女ですが、この「卒業文集あるある」とも言える運命的な巡り合わせが、彼女をこの大舞台へと導きました。小学生の頃に描いた夢を実現するために、彼女は今、持てる力の全てを注いでワルシャワのステージに立っているのです。
桑原志織 ショパンコンクールでの活躍から目が離せない
この記事では、第19回ショパン国際ピアノコンクールで快進撃を続ける桑原志織さんについて、その活躍の様子と彼女の魅力の源泉を多角的に解説してきました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- 桑原志織は第19回ショパンコンクールで二次予選を見事突破した
- 三次予選は2025年10月14日から16日にかけて開催される
- 二次予選では舟歌や英雄ポロネーズなどを演奏し高い評価を獲得した
- 彼女が二次予選で使用したピアノはスタインウェイであった
- 過去の主要国際コンクールでの輝かしい実績により予備予選が免除された
- 2025年5月のエリザベート王妃国際音楽コンクールでもファイナリストとなっている
- これまでのコンクール歴にはルービンシュタインやブゾーニでの準優勝が含まれる
- 彼女の演奏スタイルは卓越した技術と深い音楽性の融合と評される
- 力強さと繊細さを兼ね備えた健康的な音色が魅力の一つである
- 小学生時代の卒業文集にショパンコンクール出場を夢として記していた
- このコンクール出場は彼女にとって長年の夢の実現である
- 日本からは牛田智大と進藤実優も三次予選に進出している
- 三次予選ではソナタとマズルカが課題の中心となる
- ファイナル進出をかけた彼女の演奏に大きな期待が寄せられている
- 今後のコンクールの模様は公式YouTubeチャンネルで視聴可能である


