2025年10月26日、3歳クラシック最後の一冠「菊花賞(G1)」が京都競馬場で開催されます。「エネルジコは本当に強いのか?」この疑問を胸に、多くの競馬ファンが注目を集めています。
エネルジコは、春の青葉賞(G2)を制しながらも、日本ダービーへの出走を見送った経緯を持つ馬です。しかし、その戦績とレース内容、特に脅威の末脚は、世代トップクラスの能力を感じさせます。
父はドゥラメンテ。血統(ドゥラメンテ産駒)という側面からも、長距離レースでの活躍が期待されています。事実、スタミナ評価については、名手ルメール騎手も陣営も「距離は全く問題ない」と太鼓判を押しています。
とはいえ、今回は克服すべき課題も少なくありません。古馬相手の前哨戦、新潟記念からの不安要素(出遅れ・ローテ)、キャリアで初めてとなる初の右回り、そして未知の3000m適性。さらに、直前の調教評価は高いものの、発表された**馬体重減(-8kg)**は気になるところです。
この記事では、エネルジコは強いのか?という疑問の答えを探るため、これら全ての要素をデータベースに基づき徹底的に分析し、菊花賞での勝機を探ります。
この記事でわかること
- エネルジコが「強い」と言われる客観的な理由
- 菊花賞の3000mという距離に対する適性
- 馬体重減や初の右回りといった不安材料の真相
- ルメール騎手や陣営の最新コメントと勝機
エネルジコは本当に強いのか?菊花賞を考察
- 結論:エネルジコは強い。4戦3勝の戦績
- 強さの源泉。脅威の末脚を分析
- 長距離適性。血統(ドゥラメンテ産駒)の評価
- 鞍上はC.ルメール騎手。G1連勝へ
- 陣営のスタミナ評価と距離適性
結論:エネルジコは強い。4戦3勝の戦績
「エネルジコは本当に強いのか?」という疑問に対し、まずは4戦3勝(うち重賞1勝)という戦績が客観的な答えを示しています。
デビューは2024年10月の東京・芝1800m新馬戦。このレースでは、中団後方から直線だけで全馬を差し切り、上がり3ハロン(ゴールまでの残り600m)33.3秒という鋭い脚を使って勝利しました。
続く2戦目のセントポーリア賞(1勝クラス)では、スタートで大きく出遅れるアクシデントがありましたが、慌てず騒がず後方で脚を溜め、直線だけで再び豪快に差し切って2連勝を飾っています。
そして3戦目、重賞初挑戦となったのがダービートライアルのテレビ東京杯青葉賞(G2)です。ここでもスタートは今ひとつでしたが、C.ルメール騎手に導かれて後方で待機。直線に入ると大外から一気に加速し、メンバー最速の上がり33.4秒という末脚で突き抜け、無傷の3連勝で重賞タイトルを獲得しました。
ダービー回避と前走の敗戦
青葉賞を制し、日本ダービー(G1)の優先出走権を獲得したエネルジコですが、残念ながらコンディション不良を理由に本番を回避。目標を秋の菊花賞に切り替えました。
約4ヶ月の休養を経て、復帰戦に選ばれたのは古馬(4歳以上の馬)が相手となる新潟記念(G3)です。ここでも1番人気に支持されましたが、結果は2着。シランケドにゴール前でわずかに差され、初の黒星を喫しました。
ただ、この敗戦を悲観する必要はないと考えられます。なぜなら、長い休み明けであったことに加え、自身より斤量(負担重量)が軽く、経験豊富な古馬を相手に堂々とした競馬を見せたからです。むしろ、プラス12kgという馬体重増が示す通り、夏を越して馬体が大きく成長したことを証明する一戦となりました。
これまでの戦績をまとめた表が以下になります。
| 開催日 | レース名 | 格付 | 距離(馬場) | 着順 | 騎手 | 上り3F |
| 2024/10/20 | 2歳新馬 | – | 芝1800m(良) | 1着 | 津村明秀 | 33.3秒 |
| 2025/02/02 | セントポーリア賞 | 1勝 | 芝1800m(良) | 1着 | 池添謙一 | 34.0秒 |
| 2025/04/26 | テレビ東京杯青葉賞 | G2 | 芝2400m(良) | 1着 | C.ルメール | 33.4秒 |
| 2025/08/31 | 新潟記念 | G3 | 芝2000m(良) | 2着 | C.ルメール | 32.9秒 |
このように、唯一の敗戦も内容は濃く、そのほかのレースでは圧倒的なパフォーマンスを見せています。これらの事実から、エネルジコは世代トップクラスの実力を持つ「強い馬」であると言えるでしょう。
強さの源泉。脅威の末脚を分析
エネルジコの最大の武器は、**データベースが証明する「脅威の末脚」**です。
前述の通り、デビューから4戦すべてにおいて、出走メンバー中最速の「上がり3ハロン」タイムを記録しています。
- 新馬戦:33.3秒
- セントポーリア賞:34.0秒
- 青葉賞(G2):33.4秒
- 新潟記念(G3):32.9秒
特筆すべきは、これらのレースの多くでスタートの出遅れを挽回している点です。セントポーリア賞や青葉賞では、レースの流れに乗れず後方に置かれながらも、直線だけで前方の馬をごぼう抜きにしています。
この末脚は、単に速いだけでなく、持続力も兼ね備えています。青葉賞(2400m)では、東京競馬場の長い直線を最後まで力強く伸び続け、ゴール寸前で差し切りました。また、前走の新潟記念(2000m)では、32.9秒という驚異的な上がりタイムを記録しており、瞬発力にも磨きがかかっていることがわかります。
ルメール騎手はエネルジコの走りについて「じわじわ加速しますし、すごいゴールまで伸びる」と評価しています。この**「長く良い脚を使える」**能力こそが、エネルジコの強さの根幹を成しているのです。
長距離適性。血統(ドゥラメンテ産駒)の評価
菊花賞の舞台は3000mという長距離です。この距離への適性を測る上で、**血統(ドゥラメンテ産駒)**は非常に重要な要素となります。
エネルジコの父は、2015年に皐月賞と日本ダービーの二冠を制したドゥラメンテです。ドゥラメンテは種牡馬(しゅぼば:父親となる馬)としても大成功を収めており、特に長距離レースでその血の力を発揮しています。
ドゥラメンテ産駒の菊花賞実績
ドゥラメンテ産駒は、これまで菊花賞で圧倒的な強さを見せてきました。
- 2021年:タイトルホルダー(菊花賞 優勝)
- 2023年:ドゥレッツァ(菊花賞 優勝)
タイトルホルダーはその後、天皇賞(春)や宝塚記念といったG1レースを勝利する名馬へと成長しました。ドゥレッツァも、菊花賞を制して世代の頂点に立っています。
このように、父ドゥラメンテは産駒に豊富なスタミナと底力を伝えており、エネルジコもその恩恵を強く受けている可能性が高いです。エネルジコ自身、ドゥラメンテ産駒の最終世代(ラストクロップ)にあたり、その活躍には大きな期待が寄せられています。
母のエノラ(母の父 Noverre)はヨーロッパの血統であり、この配合がスタミナと瞬発力を両立させている要因の一つとも考えられます。血統背景から見ても、3000mという距離は歓迎こそすれ、マイナスになる可能性は低いと評価できます。
鞍上はC.ルメール騎手。G1連勝へ
エネルジコにとって、これ以上ない強力なパートナーがC.ルメール騎手です。
ルメール騎手は、エネルジコとコンビを組んだ青葉賞で、出遅れながらも見事に勝利へと導きました。前走の新潟記念でも2着を確保しており、馬の癖や能力を完全に把握しています。
菊花賞とルメール騎手の相性
ルメール騎手は、菊花賞において抜群の実績を誇ります。
- 2016年:サトノダイヤモンド
- 2018年:フィエールマン
- 2023年:ドゥレッツァ
- 2024年:アーバンシック
過去10年で4勝を挙げており、特にドゥレッツァはドゥラメンテ産駒でした。まさに「菊男」と呼ぶにふさわしい活躍を見せています。
さらに、ルメール騎手は先週の秋華賞(G1)もエンブロイダリー(エネルジコと同じシルクレーシングの勝負服)で制しており、2週連続G1制覇、そして自身の菊花賞3連覇(2023年、2024年、2025年)がかかっています。
「スタミナがあるから距離は全く問題ない」「メンタルも強い。勝ちたい気持ちがある」と、ルメール騎手は共同会見でエネルジコに絶対の信頼を寄せています。この名手の手綱さばきが、エネルジコのG1初制覇を力強く後押しすることは間違いありません。
陣営のスタミナ評価と距離適性
騎手だけでなく、エネルジコを管理する高柳瑞樹調教師やスタッフ(佐藤助手)も、そのスタミナを高く評価しています。
ルメール騎手は1週前の追い切りに騎乗した際、「息が良くて距離はもつ」「(車に例えると)SUVっぽい。四輪駆動」と、そのパワーと持久力に太鼓判を押しました。
高柳調教師も「折り合いはつくので、何とかこなしてくれるのでは」と、3000mの距離について前向きなコメントをしています。
エネルジコ自身、レースでは後方でじっくりと脚を溜める競馬を得意としています。これは、スタミナを温存しながらレースを進められるため、長距離戦において大きな強みとなります。前走の新潟記念で古馬相手に見せた粘り強さや、青葉賞での持続力ある末脚を見る限り、陣営のスタミナ評価は非常に的確であると考えられます。
強いエネルジコを阻む菊花賞の懸念材料
- 鍵となる3000m適性と京都コース
- 不安要素。出遅れ・ローテは克服可能か
- 初の右回りがレースに与える影響
- 馬体重減(-8kg)。陣営のコメントは
- 最終調教評価。仕上がりは万全か
鍵となる3000m適性と京都コース
エネルジコが強い馬であることは間違いありませんが、菊花賞制覇に向けてはいくつかの懸念材料も存在します。その筆頭が、3000mという未知の距離と、京都競馬場の特殊なコースへの適性です。
前述の通り、陣営や騎手はスタミナに絶対の自信を見せています。血統的にもドゥラメンテ産駒は長距離を得意としており、距離自体が大きな壁になる可能性は低いかもしれません。
しかし、問題は「京都の」3000mであるという点です。
京都競馬場の芝3000m(外回り)は、スタートしてから約1周半を走るタフなコースです。最大の特徴は、3コーナー手前から4コーナーにかけて設けられた「下り坂(ディップ)」です。
この下り坂でうまく勢いをつけながらも、スタミナを消耗しすぎないようにコントロールする技術が求められます。ルメール騎手も「3~4コーナーのディップはちょっとわからないですけど、乗りやすい馬ですから大丈夫そう」とコメントしており、未知数な部分があることを認めています。
エネルジコはここまで東京(直線が長い)と新潟(直線が長い・平坦)の2つの競馬場でしか走った経験がありません。起伏があり、コーナーワークも重要になる京都コースへの対応が、勝敗を分ける鍵となります。
不安要素。出遅れ・ローテは克服可能か
次に、これまでのレースぶりやローテーション(レース間隔)に関する不安要素です。
課題のスタート(出遅れ癖)
エネルジコの最大の武器が末脚である一方、最大の課題はスタートです。デビューから4戦中3戦で出遅れ気味のスタートとなっており、新馬戦以外は後方からの競馬を余儀なくされています。
ルメール騎手も「スタートはあんまり速くないですから、彼はちょっと自分のリズムを見つけるのに時間がかかります」と認めています。
これまでは直線が長いコースだったため、出遅れても末脚で挽回できました。しかし、多頭数(18頭立て)となり、1周目の位置取りも重要になる菊花賞では、スタートの遅れが致命的になる可能性があります。
陣営もこの点は認識しており、栗東滞在中にゲート練習を実施。「今週の練習はこれまでで一番落ち着いていました」(佐藤助手)とのことで、改善の兆しは見られますが、本番でどうなるかは未知数です。
臨戦過程(ローテーション)
エネルジコの臨戦過程も、過去のデータからは不安視される点です。
エネルジコは青葉賞(4月26日)の後、ダービーを回避し、新潟記念(8月31日)で復帰しました。今回、中7週での菊花賞挑戦となります。
データを見ると、前走が新潟記念だった馬は、過去10年の菊花賞で「0勝・0連対・0馬券内」(0-0-0-4)と、1頭も馬券に絡んでいません。新潟の外回り2000mという条件が、京都の内回り3000mとは直結しにくい可能性が指摘されています。
一方で、エネルジコは元々「体質が弱くて一戦ごとのダメージが大きい」(佐藤助手)馬でした。春に無理をしてダービーを使わなかったことが、馬の成長を促し、良い状態で秋を迎えられたとも考えられます。実際に前走は古馬相手に好走しており、このローテーションがマイナスに働くとは一概には言えません。
初の右回りがレースに与える影響
競馬ファンや専門家の間で最も懸念されている点の一つが、キャリアで初めてとなる「右回り」のレースであることです。
エネルジコは、これまでの4戦すべてが「左回り」の競馬場(東京競馬場・新潟競馬場)でした。今回の京都競馬場は「右回り」です。
馬には人間と同じように「利き手(利き脚)」のようなものがあり、左回りが得意な馬、右回りが得意な馬がいます。エネルジコが右回りを苦にするタイプだった場合、最後の直線で本来の末脚を発揮できない可能性があります。
この点について、高柳調教師は興味深い見解を示しています。
「たまたま右回りは初めてですが、バランスがいい馬ではないので、右回りがいい可能性もあると思います」
これは、左回りでも完璧なバランスで走れていたわけではなく、むしろ右回りの方がスムーズに走れるかもしれない、という期待です。こればかりは実際に走ってみなければ分かりませんが、大きな不安材料であると同時に、未知の魅力(プラス要素)にもなり得ると言えます。
馬体重減(-8kg)。陣営のコメントは
2025年10月23日に発表された調教後の馬体重で、エネルジコは460kgと記録されました。これは、前走の新潟記念(468kg)からマイナス8kgとなります。
一般的に、G1のような大一番を前にして馬体重が大きく減ることは、体調面の不安(カイバ食いが落ちるなど)と捉えられがちです。
しかし、陣営のコメントは全く逆でした。佐藤助手は「(前走比8キロ減)ですが、前走が成長分込みでも太い感じがありました。乗っていても細い感じもないですね」と、不安を完全に否定しています。
むしろプラス材料か
エネルジコは前走、プラス12kgと馬体を大きく増やして出走していました。これは成長分でもありますが、陣営にとっては「まだ余裕がある(絞り切れていない)」状態だったようです。
そこから今回の菊花賞に向けて調教を積み、マイナス8kgとなったことは、**「無駄肉が取れてシャープに仕上がった」**結果だと捉えられます。
実際に、栗東に滞在してからもカイバ(エサ)を残すことはなく、体調は万全と報告されています。「疲れはないですし、前走よりも状態はいい」(佐藤助手)と、むしろ前走以上のデキにあると自信を覗かせています。したがって、この馬体重減は懸念材料ではなく、好材料と判断するのが妥当でしょう。
最終調教評価。仕上がりは万全か
馬体重減が「仕上がりの良さ」を裏付けるように、最終調教の評価も非常に高くなっています。
エネルジコは10月22日、栗東トレーニングセンターのウッドチップ(CW)コースで最終追い切りを行いました。僚馬(併走相手)を4~5馬身追いかける形でスタートし、直線で内に進路を取ると楽な手応えのまま相手を3馬身突き放しました。
時計は6ハロン(1200m)83.5秒、ラスト1ハロン(200m)11.3秒という鋭いタイムを記録。折り合いもスムーズで、時計以上のスピード感と上積みを感じさせる動きでした。
この動きに対し、競馬専門メディア(ウマニティ)は「調教評価A」という最高ランクの評価を与えています。「1週前に緩く感じた体が引き締まり、そのぶん動きのキレが増した印象」「軽い促しに対する素早い反応を見るに調子は良さそう。好仕上がり」と絶賛されています。
高柳調教師も「追い切り自体は大丈夫だったかなと思います」と、慎重ながらも納得の表情を見せています。前走以上の状態で大一番を迎えられることは、間違いなさそうです。
まとめ:やはりエネルジコは強い
ここまで「エネルジコ 強い」というテーマについて、その強さの根拠と菊花賞(G1)における懸念材料を多角的に分析してきました。
最後に、本記事の重要ポイントを箇条書きでまとめます。
- エネルジコは4戦3勝(G2・青葉賞勝ち)の実績を持つ強い馬
- 最大の武器は4戦連続で最速を記録している脅威の末脚
- 父ドゥラメンテは菊花賞馬2頭(タイトルホルダー、ドゥレッツァ)を輩出
- 血統的に3000mのスタミナは豊富と評価できる
- 鞍上は菊花賞4勝を誇るC.ルメール騎手
- ルメール騎手はエネルジコのスタミナとメンタルを絶賛
- 陣営も距離延長とスタミナに自信を見せている
- 不安要素はキャリア初の右回り(京都コース)
- 京都の3〜4コーナーの下り坂(ディップ)への対応が鍵
- スタートの出遅れ癖が多頭数の長距離戦でどう影響するか
- 前走・新潟記念組の菊花賞での成績は過去10年で馬券内ゼロ
- 調教後馬体重マイナス8kgは「太め残り解消」の好材料
- 陣営は「前走よりも状態はいい」と万全のデキをアピール
- 最終調教評価はA評価。キレのある動きで仕上がり良好
- 全ての要素を踏まえても、エネルジコが世代屈指の能力馬であることは揺るがない

