大の里の弱点を徹底解説!専門家が指摘する今後の課題とは

大の里の弱点を徹底解説!専門家が指摘する今後の課題とは
出典:二所ノ関部屋公式ホームページ(https://nishonosekibeya.com/introduction/#wrestler)

史上最速での出世街道を突き進む横綱・大の里。その圧倒的な強さの裏で、ファンや専門家からは弱点を指摘する声も聞かれます。対戦相手との相性の問題、過去の怪我の影響、そして時折見せる取り口の癖など、懸念点は少なくありません。

さらに、横綱という重圧がもたらす精神面の課題や、まだ入門から日が浅いことによる経験不足も無視できないでしょう。立ち合いでの変化への対応や、上位陣、特に横綱戦の成績から見える今後の課題は何なのでしょうか。

本記事では、様々な専門家の指摘を交えながら、大の里が弱点の克服に向けてどう取り組むべきかを、最新情報に基づき徹底的に解説します。

この記事でわかること

  • 大の里の具体的な取り口における弱点
  • 専門家や元力士が指摘する明確な課題点
  • 精神面や経験不足といった見えにくい弱点
  • 弱点を克服し、大横綱へ飛躍するための展望
目次

横綱・大の里の弱点を専門家が分析

  • 指摘される取り口の癖とは?
  • 経験不足からくる脆さ
  • 精神面の課題は存在するのか
  • 立ち合いの変化への対応力
  • 特定力士との相性の問題

指摘される取り口の癖とは?

横綱・大の里の相撲で最も多く指摘される弱点が、**「引く癖」と「四つ相撲の未熟さ」**です。

咄嗟に出てしまう「引き」

元大関・魁皇(現・浅香山親方)は、大の里の負けパターンについて「負けた相撲はどれも引く癖が出てしまっていた」と明確に言及しています。相手力士も大の里のこの癖に気づいており、「思い切り当たって来られても、残せさえすれば大の里は引いてくれる」という攻略法が浸透しつつあるのです。

特に2025年名古屋場所12日目の一山本戦では、立ち合いで押し込まれると自ら引いてしまい、物言いの末に取り直しとなりました。取り直しの一番は勝利したものの、横綱らしからぬ内容に多くの親方から苦言が呈されています。この「咄嗟に引いてしまう癖」は、圧倒的なパワーで攻めている時には見られませんが、守勢に回った際に顔を出す根深い課題と考えられます。

右を差せない時の「腰高」

また、解説者の舞の海氏は、大の里の得意な形である「右四つ」を封じられた際の脆さを指摘しています。多くの対戦相手は、大の里の強みである右差しをさせないように、立ち合いで厳しく当たってきます。その際に右を差せず、上体が起きてしまうと脇が甘くなり、相手の攻めを容易に許してしまう傾向があります。

インターネット上の相撲ファンからも、「四つ相撲ができない」「叩き癖がある」といった声が多く上がっており、恵まれた体格を活かした押し相撲の威力は絶大である一方、組まれた際の対応や攻め方のバリエーション不足が弱点として認識されています。

経験不足からくる脆さ

大の里の弱点を語る上で、入門から日が浅いことによる絶対的な経験不足は避けて通れません。

結論から言うと、まだプロの力士としての経験が浅く、特に横綱という特殊な地位での振る舞いや調整方法を体得しきれていない点が、土俵上での脆さにつながっていると考えられます。

その理由は、大の里が大学相撲を経て角界入りしてから、わずか2年余りしか経過していないためです(2025年9月時点)。元大関・魁皇氏もこの点に触れ、「入門して何年ですか?たった2年でしょ。それまで大学生だったんだから(笑)、そこを踏まえて話をしなきゃ」と、いきなり完璧な横綱ぶりを求めるのは酷であると擁護しています。

具体例として、新横綱として臨んだ2025年7月の名古屋場所が挙げられます。この場所で大の里は、昭和以降の新横綱としてはワーストとなる4つもの金星を配給してしまいました。横綱になれば、場所前のイベントや行事が格段に増え、調整が非常に難しくなります。稽古だけでなく、土俵入りや様々な所作にも慣れなければなりません。こうした環境の激変への対応や、日々のコンディション維持といった面で、経験不足が露呈した形です。

もちろん、三役以上の力士には全勝しているという事実は、地力の高さの証明です。しかし、格下の力士の挑戦を確実に退ける安定感こそが横綱には求められます。この安定感を身につけるには、今後さらなる経験の蓄積が不可欠となります。

精神面の課題は存在するのか

圧倒的なパワーで相手を薙ぎ倒す姿からは想像しにくいですが、大の里には精神面の課題も指摘されています。

それは、守勢に回った際の精神的な脆さや、土壇場での焦りです。横綱審議委員会の山内昌之委員長(当時)は、2024年11月場所後の会合で「受け身に回った時に少しバタバタしてしまう傾向が見られた」と分析しており、専門家も同様の見方をしています。

自分が優位な展開で相撲を取っている時は、手が付けられないほどの強さを発揮します。しかし、相手の厳しい攻めに遭い、自分の形になれない時に、精神的な動揺が相撲内容に現れることがあるのです。

例えば、前述の一山本戦で見せた「引き」も、攻め込まれた状況をなんとか打開しようとする焦りの表れと見ることができます。また、2024年3月場所では、全勝の尊富士を1敗で追う展開でしたが、直接対決で敗れて以降、優勝争いから一歩後退してしまいました。

もちろん、これは若さゆえの課題とも言え、経験を積むことで解消される可能性は十分にあります。ただ、常に挑戦を受ける横綱という立場では、いかなる状況でも冷静さを失わない強靭な精神力が求められます。相手に攻め込まれても慌てず、じっくりと自分の体勢に立て直すことができるかどうかが、今後の安定した成績を残す上での鍵となるでしょう。

立ち合いの変化への対応力

大の里の立ち合いの変化への対応については、弱点と強みの両側面が考えられます。

まず、弱点となりうる側面は、大の里の圧倒的な圧力が、逆に対戦相手の変化を誘発しやすいという点です。多くの力士は、大の里とまともに当たっては勝機が薄いと判断し、立ち合いで変化したり、奇襲を仕掛けたりする作戦を選択します。日大相撲部出身のプロレスラー・石田有輝選手も、「大の里関が前に出てくるのが分かっていたから、そういう怖さがあったのでは」と、相手が変化した心理を分析しています。

つまり、大の里は常に変化される可能性を頭に入れて相撲を取らなければならず、これは精神的な負担にもなり得ます。

一方で、これまでのところ、大の里は変化に対して冷静に対応できている場面が多く、むしろ強みと見ることも可能です。

象徴的だったのが、2024年の秋場所(当時・関脇)10日目の霧島戦です。この一番で霧島は立ち合いで左に変化しましたが、大の里は全く動じず、冷静に相手を捕まえて寄り切りました。この対応力の高さは、彼の相撲勘の良さを示しています。

したがって、変化への対応そのものが直接的な弱点というわけではありません。しかし、相手に変化を選択させてしまうほどの圧力が、逆に足元をすくわれる危険性を常にはらんでいる、という点は注意すべきポイントと言えるでしょう。

特定力士との相性の問題

どの力士にも苦手なタイプや特定の相手が存在するように、大の里にも相性の問題が指摘されていました。

特に、横綱・豊昇龍に対しては、大関昇進前に下手投げで3連敗を喫するなど、明らかに苦手としていました。日大相撲部出身のプロレスラー・石田有輝選手は、大の里の攻略法として「(相手は)組んで投げるとかしかない」と考察しており、豊昇龍のような投げ技を得意とする力士との対戦が、一つの鬼門となっていたのです。

これは、大の里が基本的に前に出る「押し相撲」を主体としており、組まれてからの対処、特に投げへの防御に課題があったことを示しています。

しかし、大の里の凄さは、その課題を猛スピードで克服していく点にあります。苦手としていた豊昇龍に対し、2024年9月場所14日目の直接対決では、相手得意の投げを一切許さず、一方的に押し出して優勝を決めました。この一番は、彼が相性の問題を克服しつつあることを強く印象づけました。

現在の主要ライバルとの対戦成績は以下の通りです(2025年9月場所前時点)。

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対戦相手大の里から見た成績備考
豊昇龍2勝6敗(不戦勝1含む)横綱同士の対戦ではまだ勝ち星がない
琴櫻6勝4敗大関同士の対戦では3勝1敗と勝ち越している
髙安2勝2敗(決定戦で1勝)実力者相手に互角の戦いを演じている
霧島7勝0敗得意としている相手の一人

表を見ると、豊昇龍に対しては依然として負け越しており、完全に相性問題を克服したとは言い切れません。今後、横綱同士として何度も対戦が組まれる中で、この数字をどう変えていけるかが注目されます。

大の里の弱点克服への道筋

  • 専門家の指摘する改善点
  • 横綱戦の成績から見える課題
  • 懸念される怪我のリスク
  • 弱点の克服に向けた稽古
  • 今後の課題と成長の可能性

専門家の指摘する改善点

多くの専門家が口を揃えて指摘する大の里の改善点は、**「稽古量」と「スタミナ」**です。

圧倒的に足りない稽古量

元横綱・武蔵丸(現・武蔵川親方)をはじめ、多くの親方衆が「稽古が圧倒的に足りない」と厳しい見方をしています。これは、同じ二所ノ関一門の親方からも同様の声が上がるほどで、彼の持つ規格外の才能と体格に、稽古量が追いついていないという懸念の表れです。

2024年9月場所前の横綱審議委員会による稽古総見では、積極性を欠く姿勢に境川巡業部長(元小結・両国)から檄が飛ぶ場面もありました。才能だけで勝ち続けられるほど、横綱の世界は甘くありません。地道な稽古の積み重ねがなければ、いずれ壁に突き当たると専門家は見ているのです。

スタミナ不足と腰高

日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)は、「スタミナがない。ここ一番では馬力を発揮するけど、上に上がろうとするならスタミナが課題」と明確に指摘しています。長い相撲になった際の対応力や、15日間を通して高いパフォーマンスを維持する持久力は、今後の大きな課題です。

また、元横綱・2代栃東(現・玉ノ井親方)や元横綱・武蔵丸など複数の親方が、相撲の基本である「腰高」を指摘しています。腰が高いと、相手の低い攻めに対応しにくく、安定感を欠く原因となります。これもまた、基礎的な稽古の反復によって改善していくべき点と考えられます。

これらの指摘は、大の里への期待の裏返しでもあります。恵まれた素質に、十分な稽古量が加わった時、どれほどの力士になるのかという期待が込められているのです。

横綱戦の成績から見える課題

大の里は、平幕や三役時代に横綱・照ノ富士から白星を挙げるなど、素晴らしい実績を残してきました。しかし、自身が横綱になってからの成績を見ると、横綱としての安定感という新たな課題が浮かび上がります。

前述の通り、新横綱として臨んだ2025年7月場所では、王鵬、伯桜鵬、玉鷲、そして東前頭15枚目の琴勝峰に敗れ、昭和以降の新横綱としてはワーストとなる4つの金星を配給しました。

この結果から見える課題は、主に2つです。

一つは、全ての力士から研究され、全力で挑戦される立場への対応です。横綱との一番は、どの力士にとっても大勝負であり、特別な対策を練って臨んできます。この厳しい挑戦を15日間、常に受け続け、はね返し続ける精神力と対応力が求められます。この場所での取りこぼしは、その厳しさに直面した結果と言えるでしょう。

もう一つは、不名誉な記録を作ってしまったという事実です。特に琴勝峰に敗れた一番は、大正時代以降、横綱が最も番付下位の力士に敗れたという記録になってしまいました。こうした格下力士への取りこぼしは、場所全体の流れを悪くするだけでなく、横綱としての信頼を損ないかねません。

もちろん、これは新横綱としての洗礼であり、誰もが通る道かもしれません。しかし、この経験から何を学び、次の場所でどう立て直すかが、真価の問われるところです。

懸念される怪我のリスク

現在の相撲内容を続けることによる、将来的な怪我のリスクも懸念されています。

最大の要因は、専門家から繰り返し指摘されている**「腰高」**な相撲です。腰が高いまま相手とぶつかると、衝撃がまともに膝や腰に伝わり、大きな負担がかかります。大の里は192cm180kgを超える巨体であり、その分、関節にかかる負担は計り知れません。

また、同門の親方衆からも「このままでは必ず怪我をする」と、稽古不足が怪我のリスクを高めると忠告されています。十分な稽古を積むことは、技術の向上だけでなく、怪我に強い体を作る上でも不可欠です。

過去には、同じく横綱として期待された豊昇龍が足の指の怪我で休場するなど、上位力士にとって怪我は常に隣り合わせの存在です。特に大の里のように、恵まれた体格とパワーに頼った相撲を取りがちな力士は、一度大きな怪我をすると、その後の相撲人生に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

幸い、これまで大きな怪我はありませんが、今のうちから相撲の基本である「腰を割る」ことを徹底し、怪我をしない体作りと相撲を身につけることが、長く横綱として活躍するための重要な鍵となります。

弱点の克服に向けた稽古

数々の弱点が指摘される大の里ですが、それらを克服するための道はただ一つ、地道な稽古の反復に尽きます。

癖を体に覚えさせる

元大関・魁皇氏は、大の里の引く癖について「咄嗟に引いてしまう癖をなくすよう、体で覚えなきゃいけないんです」と語っています。頭で理解していても、土俵際の苦しい場面では無意識にこれまでの癖が出てしまいます。これを矯正するには、意識せずとも正しい動きができるようになるまで、何度も何度も反復稽古を行うしかありません。

幸い、二所ノ関部屋には、叔父弟子である元大関・高安という絶好の稽古相手がいます。高安は、大の里が大関、そして横綱に昇進した後も、一切の遠慮なくぶつかり稽古で砂まみれにする厳しい指導を行っており、これが大の里の成長を力強く後押ししています。

取り口の幅を広げる

押し相撲だけでなく、右四つ左四つ、どちらからでも攻められるようになれば、取り口の幅は大きく広がります。特に、課題とされる左からの攻めについては、稽古で左のおっつけを磨くなど、すでに対策に着手しており、徐々に成果として現れ始めています。

このように、指摘された弱点から目をそらさず、厳しい稽古を通じて一つずつ潰していく姿勢こそが、大の里をさらなる高みへと導くでしょう。

今後の課題と成長の可能性

大の里が真の大横綱へと飛躍するために、**今後の最大の課題は「稽古量に裏打ちされたスタミナと安定感」**を身につけることです。

これまで見てきたように、大の里には引く癖、腰高、精神面の脆さ、そして経験不足といった多くの課題が存在します。これらのほとんどは、才能や体格だけでは乗り越えられない、地道な稽古によってのみ克服できるものです。

しかし、これらの課題は、裏を返せばそれだけ計り知れない「伸びしろ」が残されていることの証明でもあります。

元大関・魁皇氏が「いろいろ吸収して学んで、これからますます強くなるはず。のびしろの多い横綱ですよ」と評価するように、まだ入門から日が浅い彼が、これらの課題を克服した時、どれほど手が付けられない力士になるのか、期待は膨らむばかりです。

大の里自身も、大関昇進の口上で「唯一無二の力士を目指し、相撲道に精進します」と決意を述べました。数々の弱点を克服し、その恵まれた素質を完全に開花させた時、まさに「唯一無二」と呼ぶにふさわしい、歴史に残る大横綱が誕生するに違いありません。

まとめ:大の里の弱点と期待

  • 大の里の主な弱点は攻め込まれた際の引く癖
  • 四つ相撲の未熟さや取り口のバリエーション不足も指摘される
  • 根本的な課題として腰高な相撲が挙げられる
  • 専門家からは守勢に回った際の精神的な脆さも課題とされる
  • 角界入りから日が浅く絶対的な経験不足は否めない
  • 横綱特有の行事の多さがコンディション調整に影響する可能性
  • 立ち合いの変化には冷静に対応できる強みも持つ
  • かつては豊昇龍など投げ技を得意とする力士を苦手としていた
  • 元大関魁皇氏は若さゆえの経験不足を考慮すべきと擁護
  • 八角理事長は15日間戦い抜くスタミナ不足を最大の課題と見る
  • 武蔵川親方をはじめ多くの親方衆から稽古不足を厳しく指摘
  • 新横綱場所で金星を4つ配給し横綱としての安定感に欠けた
  • 腰高でパワーに頼る相撲は将来的な怪我のリスクをはらむ
  • 弱点克服の鍵は叔父弟子・高安との厳しい反復稽古
  • 多くの課題を抱える一方でその伸びしろは計り知れない
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