クラシック三冠の最終戦、菊花賞(2025年10月26日開催)を目前に控え、多くの競馬ファンが世代屈指の素質馬・エリキングの故障について再び注目しています。
昨年末に判明した右第1指骨剥離骨折は、ファンに衝撃を与えました。その後、3ヵ月の休養を余儀なくされ、春のクラシックシーズンは万全とは言えないスタートとなったのも事実です。
実際に、骨折明けの不安がささやかれた復帰戦の皐月賞では11着と大敗を喫し、故障の影響が敗因の一つとしてなかったとは言い切れませんでした。
しかし、日本ダービーでの上がり最速5着を経て、秋初戦の神戸新聞杯で見せた圧巻の復活劇は、現在の馬体が本格化したことを強く印象づける走りです。
明日に迫った本番に向け、菊花賞での状態は本当に万全なのでしょうか。最新の陣営コメントと客観的なデータを基に、エリキングの「今」を徹底解説します。
この記事でわかること
- エリキングの骨折の経緯と現在の状態
- 復帰後の皐月賞の敗因とダービーでの走り
- 前走・神戸新聞杯の圧勝と本格化の兆し
- 菊花賞(3000m)の適性とデータ上の不安要素
エリキング 故障の経緯と現在の状態
- 骨折明け 不安は結論から言うと?
- 2024年の右第1指骨剥離骨折とは
- 全治3ヵ月の休養と復帰過程
- 故障の影響はあったのか?
- 皐月賞 敗因と骨折の関係
骨折明け 不安は結論から言うと?
2025年の菊花賞を前に、多くのファンが抱く「エリキングは骨折明けの不安がないのか?」という疑問にお答えします。
結論から申し上げますと、その不安はほぼ解消されたと考えてよいでしょう。
最大の理由は、秋の始動戦として出走したG2・神戸新聞杯(2025年9月21日)で見せた圧巻のパフォーマンスにあります。このレースでは、日本ダービー3着馬のショウヘイらを相手に、レースの上がり3ハロン(最後の600m)を32秒3という驚異的な末脚で差し切り、復活勝利を飾りました。
レース後の陣営からも「前走後のダメージもなく順調です」と、状態の良さを強調するコメントが繰り返し出ています。
もちろん、昨年末にG1級の故障をした事実は変わりません。しかし、その後の順調な回復と、夏を越しての確実な成長が、前走の結果と現在の良好な状態に結びついています。
この記事では、まずエリキングが経験した故障の詳細から、春のクラシックでの苦戦、そして見事に復活を遂げた現在までのプロセスを詳しく掘り下げていきます。
2024年の右第1指骨剥離骨折とは
エリキングのキャリアにおいて、最初の大きな試練は2歳(2024年)の冬に訪れました。
デビューから無傷の3連勝でラジオNIKKEI杯京都2歳ステークス(G3)を制し、クラシックの最有力候補と目されていた矢先の出来事です。
2024年12月12日、JRA(日本中央競馬会)は、エリキングが「右第1指骨剥離骨折(みぎだいいちしこつはくりこっせつ)」を発症したことを発表しました。
剥離骨折とは?
競走馬の「指骨」とは、人間の指の骨とは異なり、球節(足首のような部分)と蹄(ひづめ)の間にある骨を指します。剥離骨折は、強い衝撃や負荷によって、この骨の一部が文字通り“剥がれ落ちてしまう”故障です。
特に若駒(若い馬)が急激な成長やハードな調教・レースで発症しやすい故障の一つとされています。命に関わる重症ではありませんが、剥がれた骨片が関節を刺激して痛みや炎症を引き起こすため、早期の発見と休養が不可欠です。
幸いにもエリキングの症状は軽度であったと報じられており、手術は無事に成功しました。この時点で「全治3ヵ月以上」との見通しが立てられ、クラシックシーズンに間に合わせるための治療と休養に入ることになります。
全治3ヵ月の休養と復帰過程
前述の通り、2024年12月に右第1指骨剥離骨折が判明したエリキングは、すぐに手術を受け、約3ヵ月間の休養に入りました。
陣営(中内田充正厩舎)の懸命なケアと馬自身の回復力により、予後は良好であったと報じられています。年が明けた2025年からは、クラシック第一弾である皐月賞(4月20日)を目標に、慎重に調整が進められました。
この復帰過程において、中内田調教師はエリキングの状態を確かめるために自ら調教で騎乗する場面が何度も見られました。通常、厩舎のトップである調教師が自らG1馬候補の追い切りに乗ることは珍しく、それだけエリキングの状態確認に万全を期していたことがうかがえます。
調教師は「(馬は)偉いですね。馬自身がよくここまで耐えてくれたというのが本音」と語っており、苦しいリハビリと調整メニューを乗り越えた馬を称賛しています。
結果として、エリキングは3ヵ月の休養期間を経て、クラシック本番である皐月賞(G1)の舞台に、約5ヶ月ぶり(中147日)の実戦として駒を進めることになりました。
故障の影響はあったのか?
ファンにとって最大の関心事であった「骨折の影響」について、陣営は当時どのように捉えていたのでしょうか。
皐月賞に向けた調整段階で、中内田調教師はメディアの取材に対し、「骨折の影響はほぼないと思っていただいて大丈夫」と力強くコメントしています。手術の成功と順調な回復が、この自信の裏付けとなっていたようです。
ただし、同時に「もちろんがっかりした。あちゃ~っという感じ」「休み明けということは頭にあるが、現状の力は発揮してくれるのでは」とも語っていました。
これらのコメントを総合すると、「故障箇所そのものの不安はないものの、約5ヶ月という長いレース間隔(ブランク)が、G1という厳しい舞台でどう出るか」という点が、陣営にとっての唯一の懸念であったと考えられます。
故障の影響が「ゼロ」であったかどうかは、結果論でしか語れません。しかし、少なくとも陣営が「故障箇所は完治している」という前提で皐月賞に送り出したことは間違いありません。
皐月賞 敗因と骨折の関係
2025年4月20日、エリキングは骨折からの復帰戦として皐月賞(G1)に出走しました。無傷の3連勝馬という実績から5番人気に支持されましたが、結果は11着という大敗に終わります。
この敗因について、骨折との直接的な関係を指摘する声もありました。しかし、レース内容や陣営のコメントを分析すると、他の要因が大きく影響した可能性が高いと見られます。
最大の敗因は「久々」と「馬場」
第一に、前述の通り、エリキングにとってこのレースは約5ヶ月ぶり(中147日)の実戦でした。G1レースは、トライアルレースなどを使って万全の状態に仕上げてくる馬がほとんどであり、故障明けぶっつけ本番の馬が、息遣いやレース勘の面で不利であったことは想像に難くありません。
第二に、当日の中山競馬場の馬場状態が挙げられます。この日の芝コースは非常に硬く、速い時計が出るコンディションでした。トビ(走り方)が大きく、ゆったりとした走りが持ち味のエリキングにとって、この硬い馬場は合わなかった可能性があります。
レース後、川田将雅騎手も「ダービーで改めてですね」と前を向いており、陣営もこの一戦を“叩き台”として、次走の日本ダービー(G1)での巻き返しを見据えていました。
続く日本ダービー(6月1日)では、後方からの競馬になりながらも上がり3F(最後の600m)最速の脚を繰り出して5着に健闘します。この走りこそ、エリキングが故障の影響から脱し、本来の能力を取り戻しつつあることの証明でした。
エリキング 故障を乗り越え菊花賞へ
- 神戸新聞杯 復活の圧勝劇
- 現在の馬体と仕上がりを分析
- 菊花賞 状態は万全か
- 最新の陣営コメントまとめ
- まとめ:エリキング 故障の不安と展望
神戸新聞杯 復活の圧勝劇
春のクラシック(皐月賞11着、ダービー5着)で不完全燃焼に終わったエリキングが、その鬱憤を晴らすかのように圧巻の走りを見せたのが、秋の始動戦となった神戸新聞杯(G2・2025年9月21日)です。
夏を越して休養を挟んだエリキングは、馬体重がダービー時からプラス10kgの510kgと、明らかに馬体をパワーアップさせてターフに戻ってきました。
レースは10頭立てと少頭数ながら、ダービー3着馬ショウヘイや、京都2歳S・野路菊Sでエリキングの2着だったジョバンニなど、実力馬が揃う一戦となりました。
道中は中団やや後方でじっくりと脚を溜めたエリキングは、直線に向くと川田騎手のゴーサインに応えて大外から一気に加速。先に抜け出したショウヘイをゴール前で軽々と捉え、メンバー断トツとなる上がり3F 32秒3という驚異的な末脚で差し切り勝ちを収めました。
この上がり3F 32秒3は、阪神芝2400mのG2レースとしては異例の速さです。超スローペースであったことを考慮しても、最後の直線だけで他馬をごぼう抜きにした瞬発力は、エリキングが世代トップクラスの能力を持っていることを改めて証明しました。
この勝利で、エリキングは骨折からの完全復活を遂げただけでなく、3000mの菊花賞に向けて最も重要な「折り合い(道中でリラックスして走ること)」と「瞬発力」を兼ね備えていることを見事にアピールしたのです。
現在の馬体と仕上がりを分析
神戸新聞杯を圧勝し、菊花賞の最有力候補として再び名乗りを上げたエリキング。レース後の状態、そして現在の馬体や仕上がりはどうなっているのでしょうか。
まず、前走の神戸新聞杯は、陣営が「先を見据えて若干は余裕残しのつくり」とコメントしていた通り、100%の仕上げではありませんでした。にもかかわらずあの圧勝劇を見せたことは、馬の能力の高さを示しています。
馬体重の推移と現在の状態
エリキングの馬体重の推移を見てみましょう。
| レース名 | 馬体重 | 前走比 |
| 2歳新馬 (2024/06) | 484kg | – |
| 京都2歳S (2024/11) | 498kg | 0kg |
| 皐月賞 (2025/04) | 500kg | +2kg |
| 日本ダービー (2025/06) | 500kg | 0kg |
| 神戸新聞杯 (2025/09) | 510kg | +10kg |
デビューから約500kg前後で安定していましたが、夏を越した神戸新聞杯でプラス10kgと大幅に増加しました。これは太ったわけではなく、骨格の成長に伴って筋肉量が増えた「本格化」の証と捉えられます。
2025年10月23日(木)にJRAから発表された菊花賞の調教後馬体重は512kg(計量日は22日)となっており、前走からさらに微増しています。
この点について福永祐一調教助手は、「(神戸新聞杯は)余裕残しの仕上げだったが、1度使ったことで馬体はしっかりと引き締まっている」「前回(510kg)と同じか、少し減るぐらいで(レース当日は)臨めると思う」とコメントしており、輸送を考慮しても理想的な馬体重で出走できる見込みです。
春のクラシック時とは明らかに違う、パワーアップした現在の馬体は、3000mの長丁場を戦い抜くための大きな武器となるでしょう。
菊花賞 状態は万全か
結論として、エリキングの菊花賞に向けた状態は万全と判断できます。
最大の不安要素であった「故障明け」の影響は、前走の神戸新聞杯の勝利で完全に払拭されました。さらに、陣営からは「前走後のダメージもなく順調です」という心強いコメントが繰り返し発せられています。
2025年10月24日(金)の朝には、レース前の最終調整として栗東トレーニングセンターの坂路コースで軽快な走りを見せました(4F 61秒5 – 1F 14秒4)。これはレース直前の馬体をほぐす程度の軽い内容ですが、一歩一歩確かな脚どりで駆け上がっており、疲れが一切ないことを示しています。
福永助手も「追い切り後の反動もなく順調」と好調ぶりを伝えており、春のクラシックとは異なり、万全のローテーションで本番を迎えられることは間違いありません。
まさに「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がふさわしい仕上がりにあると言えます。
最新の陣営コメントまとめ
菊花賞(2025年10月26日)のレースを直前に控え、中内田厩舎のスタッフからはエリキングの状態の良さと期待が伝わるコメントが多く寄せられています。
主なコメントを以下にまとめました。
福永祐一 調教助手
- (前走・神戸新聞杯について)「先を見据えて若干は余裕残しのつくりで臨んだ秋初戦でした。遅い流れで決して展開が向いたとは言えないなかでも、外からしっかりと差し切る強い競馬ができたように思います」(Yahoo!ニュース, netkeiba 10月25日付)
- (現在の状態について)「前走後のダメージもなく、順調です。体重は510キロを切るくらい(もしくは前回と同じか少し減るぐらい)で出られると思います」(馬トク報知 10月24日付, netkeiba 10月25日付)
- (菊花賞の3000mという距離について)「距離に関しては上手に対応してくれることを期待します」(スポニチ 10月25日付)
- (馬場について)「エンジンのかかりや跳びの大きな走りからは、できれば良馬場で走らせてあげたいですね」(UMATOKU 10月23日付)
- (総括として)「ここまで予定通りの調教メニューを消化。レースへ向けての態勢は整ったとみています」(UMATOKU 10月23日付)
陣営のコメントからは、前走の勝ち方を高く評価していること、そして現在も極めて順調に調整が進んでいることが明確に伝わってきます。
まとめ:エリキング 故障の不安と展望
ここまでエリキングの故障から現在に至るまでの経緯と状態を詳細に見てきました。
2024年末の骨折判明時はクラシック出走すら危ぶまれましたが、陣営の尽力と馬自身の回復力で見事に復帰。春は万全とは言えない中でダービー5着と地力の高さを示し、秋初戦の神戸新聞杯では圧巻のパフォーマンスで本格化をアピールしました。
状態面に関しては、前述の通り「万全」と言って差し支えありません。故障の不安は過去のものとなっています。
ただし、**菊花賞(G1・京都 芝3000m)**というレースは、状態が良いだけでは勝てない特殊な舞台です。エリキングが「真の王者」となるためには、いくつかのデータ的な課題を乗り越える必要があります。
課題①:3000mの距離適性
これはエリキングだけでなく、出走する全馬が初めて経験する距離です。神戸新聞杯で見せた「折り合い」と「瞬発力」は長距離適性の高さを示唆していますが、こればかりは走ってみなければ分かりません。
血統面(父キズナ)では、同じキズナ産駒のディープボンドが3000m以上のG1(天皇賞・春 2着)やG2(阪神大賞典 連覇)で活躍しており、スタミナの裏付けはあります。
課題②:鞍上・川田将雅騎手の長距離G1成績
名手・川田将雅騎手ですが、データ上、菊花賞は2010年のビッグウィークでの勝利が唯一であり、2500m以上のG1レースとは相性が良いとは言えません(2025年10月25日時点)。ファンからはこの点を不安視する声もあります。
課題③:不利とされる枠順
今回エリキングが入った「7枠15番」は、菊花賞においてデータ的に非常に厳しい枠です。京都競馬場が改修された2000年以降、15番枠から勝ち馬は一頭も出ていません。
状態は万全。しかし、距離、騎手、枠順という3つの大きなハードルが存在します。エリキングがこれらの不安要素をすべて乗り越え、世代の頂点に立つことができるのか。明日のレースにすべてが懸かっています。
まとめ:エリキング 故障の不安と菊花賞への挑戦
エリキングの故障に関する情報を中心に、菊花賞への展望を解説しました。この記事の重要なポイントを箇条書きでまとめます。
- エリキングは2024年12月に右第1指骨剥離骨折が判明した
- 約3ヵ月の休養を余儀なくされ、クラシック路線に影響が出た
- 故障の影響について陣営は当時から「ほぼない」とコメントしていた
- 復帰戦の皐月賞は骨折明けに加え馬場も響き11着に敗れた
- 続く日本ダービーでは上がり最速の脚を使い5着と復調を示した
- 夏を越し馬体が増加(プラス10kg)して秋を迎えた
- 秋初戦の神戸新聞杯では上がり32秒3の豪脚で復活勝利を飾った
- この勝利により骨折明けの不安は完全に払拭されたと見られる
- 現在の状態は陣営が「ダメージもなく順調」と語る通り万全
- 10月24日の最終調整でも軽快な動きを見せた
- 調教後馬体重は512kgと前走時を維持しており仕上がりは良好
- 菊花賞の3000mという距離適性が最大の鍵となる
- 血統面ではキズナ産駒のディープボンドが長距離で実績を残している
- 不安要素として川田騎手の長距離G1のデータがある
- もう一つの不安要素は7枠15番というデータ的に不利な枠順である

