2025年5月の就任からわずか156日、学歴詐称疑惑に揺れた静岡県伊東市の田久保眞紀市長が、2025年10月31日に失職しました。市政の混乱を招いたにもかかわらず、退職金 192万円が支給される見通しです。一方で、失職が1日早まったことで、冬のボーナス 1日差での支給は回避されました。
この背景には、市の幹部職員による市幹部の機転があったと報じられています。今回の学歴詐称 結末に至るまでの過程で、議会の解散に伴う市議選や、これから行われる市長選の選挙費用 1億円近くが市民の税金から支出される見込みです。
5カ月にわたる市政の混乱、失職後の涙、そして注目される次期市長選への再出馬の可能性まで、今回の問題の核心である退職金の支給条例の根拠を含め、一連の経緯を詳しく解説します。
この記事でわかること
- 田久保前市長に退職金192万円が支給される法的な根拠
 - 冬のボーナスが「1日差」で不支給となった詳細な経緯
 - 一連の混乱で発生した市議選・市長選の費用総額
 - 田久保前市長の今後の動向と再出馬の可能性
 
田久保伊東市長の失職と退職金の詳細
- 退職金が支払われる支給条例の根拠
 - 支給額は退職金192万円と判明
 - ボーナス1日差での不支給
 - 節税に貢献した市幹部の機転
 - わずか在任156日での退場
 
退職金が支払われる支給条例の根拠
静岡県伊東市の田久保眞紀前市長は、2025年10月31日に市議会で2度目の不信任決議案が可決され、地方自治法の規定により失職しました。市政に大きな混乱をもたらしたにもかかわらず、退職金が支給されることに疑問を持つ方も多いかもしれません。
この支給の理由は、伊東市の条例に基づいているためです。
地方公務員法や各自治体の条例では、市長などの特別職が任期途中で失職した場合でも、その在職期間に応じた退職手当(退職金)を支給することが定められています。これは、懲戒免職など特定の重大な理由に該当しない限り、在職した事実に基づいて支払われるものです。
今回のケースは学歴詐称疑惑が発端ですが、法的には「不信任決議による失職」にあたります。伊東市の「特別職の職員の給与に関する条例」には、市長の退職手当に関する規定があり、今回の失職はこの条例に基づいて処理されることになります。したがって、市民感情としては納得しがたい面があったとしても、法的なルールに従って退職金は支払われることになります。
支給額は退職金192万円と判明
2025年11月1日の報道によれば、失職した田久保前市長には退職手当として192万3750円が支給される見通しです。
伊東市の条例では、市長の退職金は「給料月額 × 勤続月数 × 100分の45」という計算式で算出されると報じられています。田久保前市長の月額給与は85万5000円でした。
この計算式に当てはめると、192万3750円という金額は、在職月数が「5カ月分」として計算されたことになります(85万5000円 × 0.45 × 5カ月 = 1,923,750円)。田久保前市長の在任期間は2025年5月29日から10月31日まででした。もし失職が1日遅れて11月1日であれば、在職月数が「6カ月」とカウントされ、退職金はさらに1カ月分(約38万5千円)増額されていた可能性があります。
この192万円という金額は、市政を約5カ月間停滞させた代償としては、市民感覚からすると非常に複雑な受け止め方をされる数字と言えます。
ボーナス1日差での不支給
今回の失職劇で最も注目されたのが、冬のボーナス(期末手当)の扱いです。結論から言うと、田久保前市長への冬のボーナス支給は「1日差」で回避されました。
市の条例では、冬の期末手当の支給基準日は「12月1日」と定められています。この基準日に在職していることが支給の絶対条件です。
田久保前市長は10月31日付で失職しました。もし、臨時会の開催が1日でも遅れて11月1日以降に失職していた場合、基準日(12月1日)から1カ月以内に在職していたことになり、ボーナス(期末手当)を受け取る権利が発生していました。
報道によれば、仮に支給されていた場合の金額は、満額(約186万円)の8割にあたる約149万円だったと試算されています。市民の税金から、さらなる支出が行われる事態は間一髪で避けられた形です。
節税に貢献した市幹部の機転
この「ボーナス1日差での不支給」という結果は、単なる偶然ではありませんでした。そこには、**伊東市幹部職員の「ナイスな機転」**があったと報じられています。
田久保前市長は9月1日の不信任決議可決後に議会を解散しました。10月19日の市議選で不信任に賛成した議員が全員再選し、市長の失職は決定的となりました。しかし、問題は「いつ失職させるか」でした。
地方自治法上、市長は議会からの招集請求を受けても20日以内に臨時会を開けばよいため、田久保前市長が意図的に引き延ばせば、失職が11月、あるいは12月1日の基準日を越える可能性が危惧されていました。
この事態を打開するため、市の幹部職員が動きました。議会がまだ招集権を持たない9月中旬の段階で、**「9月初旬の台風15号の災害復旧にかかる補正予算を早急に計上する必要がある」**という、市長として拒否しづらい名目を立てて臨時会の開催を進言したのです。
この進言を受け入れた結果、臨時会は10月31日に設定されました。この幹部職員の働きかけがなければ、田久保前市長は冬のボーナス約149万円と、前述の退職金1カ月分(約38万5千円)の合計約190万円を余分に受け取っていた可能性が高く、市の財政を守る大きな貢献となりました。
わずか在任156日での退場
田久保前市長が伊東市長として在職したのは、2025年5月29日の就任から10月31日の失職まで、わずか156日間でした。これは伊東市史上、最短の在任期間となります。
伊東市初の女性市長として当選しましたが、就任直後から学歴詐称疑惑が浮上。その後は議会との対立や辞職表明の撤回などで迷走を続け、市政は完全に停滞しました。
この156日間で、市長が本来行うべき政策の実行や、市の将来に向けた施策が進んだという報道はほとんど見られません。結果として、市民に混乱と不安だけを残し、市役所には累計1万2000件を超える苦情が殺到する事態となりました。
田久保伊東市長の失職と退職金以外の影響
- 学歴詐称問題の結末
 - 5カ月に及んだ市政の混乱
 - 市議選と市長選の選挙費用1億円
 - 失職後の涙と「やりきった」発言
 - 次期市長選への再出馬の可能性
 
学歴詐称問題の結末
今回の混乱の根本的な発端は、田久保前市長の学歴詐称疑惑でした。市長選で「東洋大学法学部卒業」と公表していましたが、就任直後にこれが事実ではなく「除籍」であったことが判明しました。
問題が発覚した後も、田久保前市長は明確な説明を避け続けました。
- 7月には一度辞職を表明しましたが、数日後にこれを撤回。
 - 議会が地方自治法100条に基づき設置した調査特別委員会(百条委員会)への出頭も拒否。
 - 9月1日の市議会で1度目の不信任決議案が可決されると、辞職を選ばず議会を解散しました。
 
最終的に、10月19日の市議選で不信任派の議員が圧勝したことを受け、10月31日の臨時会で2度目の不信任決議案が可決。これにより、学歴詐称疑惑について市民や議会への説明責任を果たさないまま、法的に失職するという結末を迎えました。失職後、市役所のホームページのプロフィールは「高校卒」に変更されています。
5カ月に及んだ市政の混乱
田久保前市長が在任した約5カ月間、伊東市政は実質的に**「機能不全」**の状態に陥っていました。
最も大きな問題の一つが、副市長と教育長という市の重要ポストが最後まで空席だったことです。市長が議会と対立していたため、これらの人事案を議会に提出し、同意を得るプロセスを進めることができませんでした。
前述の通り、市長の「暴走」とも言える議会解散や辞職撤回に対し、市役所には市民からの抗議や苦情の電話・メールが殺到し、その数は累計で1万2000件を超えたと報じられています。職員は通常の市民サービスに加え、これらの対応にも追われることになりました。
市長が不在となった今、副市長もいないため、部長級の職員が市長の職務代理者を務めるという異例の事態となっています。
市議選と市長選の選挙費用1億円
一連の混乱が市民生活に与えた最大の負託は、巨額の選挙費用です。
田久保前市長が9月に議会を解散したことにより、本来であれば必要のなかった市議会議員選挙(10月19日投開票)が実施されました。この選挙にかかった費用は、ポスター掲示場の設置費用や人件費などを含め、約6300万円から6500万円に上るとされています。
さらに、今回の失職に伴い、50日以内に新たな市長を選ぶための市長選挙が実施されます。この市長選にも約3000万円以上の費用が見込まれています。
これらを合計すると、田久保前市長個人の問題を発端とした混乱によって、**約1億円もの税金(民主主義費用)**が費やされる計算になります。この1億円があれば、他の市民サービスやインフラ整備に充てられた可能性を考えると、市民が被った損失は計り知れません。
失職後の涙と「やりきった」発言
2025年10月31日、市議会で2度目の不信任決議案が可決され、失職が決定した後、田久保前市長は記者団の取材に応じました。
その際、時折涙を浮かべながら、市民や職員への感謝を口にする場面もありました。一方で、わずか156日間の在任期間を振り返り、**「一生懸命がんばった。やり切った」**と述べ、この発言がさらなる批判を招くことにもなりました。
また、自身の学歴問題と失職をかけ、「市長職も中退でなく除籍になってしまいました!」と発言したとも報じられており、最後まで混乱を招いた当事者としての反省や謝罪の言葉は明確には聞かれませんでした。
次期市長選への再出馬の可能性
最大の焦点は、田久保前市長の今後の動向です。失職に伴う次期伊東市長選挙は、12月14日投開票の日程が有力視されています。
田久保前市長は、失職後の記者会見では次期市長選への対応について**「現時点では明言を避けたい」「支援者と話し合う」**と述べるにとどまっています。
しかし、一部の報道では出直し選挙に意欲を示しているとも伝えられています。もし田久保前市長が立候補すれば、選挙戦は再び混乱することが予想されます。
すでに、2025年5月の市長選で田久保氏に敗れた前市長の小野達也氏をはじめ、少なくとも5人が出馬を検討していると報じられています。田久保氏が出馬すれば6人以上による乱戦となり、反・田久保票が分散することで、かえって田久保氏に有利に働く可能性もゼロではありません。市民にとっては、まだ混乱の第2幕が残されている状況です。
田久保伊東市長の失職と退職金まとめ
田久保伊東市長の失職と退職金に関する一連の騒動について、重要なポイントを以下にまとめます。
- 田久保前市長は2025年10月31日に失職が決定した
 - 在任期間はわずか156日で伊東市史上最短となった
 - 失職したが条例に基づき退職金192万3750円が支給される
 - この金額は在職「5カ月分」として計算されたものと見られる
 - 失職が1日遅れていれば退職金は1カ月分増額されていた
 - 冬のボーナスは約149万円が支給される可能性があった
 - 支給基準日が12月1日のため「1日差」で不支給となった
 - この背景には市幹部が災害復旧予算を名目に臨時会開催を進言した機転があった
 - 結果として約190万円の税金支出が阻止された
 - 混乱の発端は「東洋大学卒業」とした学歴詐称疑惑だった
 - 田久保前市長は説明責任を果たさないまま失職に至った
 - 在任中、副市長と教育長は任命されず空席のままだった
 - 議会解散による市議選費用で約6300万円が支出された
 - 次期市長選の費用約3000万円と合わせ、計1億円近い税金が費やされる
 - 田久保前市長は失職後に涙を見せ「やりきった」と発言した
 - 次期市長選への再出馬については明言を避けているが、乱戦が予想される
 
